ITエンジニア・プログラマーの置かれている労働環境について

2017-09-11 2017-09-13

IT業界と言えば長時間残業。
最近はそうでもない会社が増えつつありますが、そんなこと言っても世間の認識はそう簡単には変わらない。

と思っていたんですが、どうやら思っていた以上に、IT業界の労働環境に対する印象が変化していたらしい。

知り合いをプログラマにさせたいんだけど知恵を貸してくれ
https://anond.hatelabo.jp/20170910205249

プログラマって育休からの復帰しやすいだろうし、アルバイトよりは待遇いいし、勤怠ゆるいし、労力の割に楽ちんだと思うんだよね。

苦労してきた立場からすると色々思うところもありますが、業界的には大変喜ばしいことだと思います。こういった考えを持つ人が増えれば、人材不足も段々と解決されていくでしょう。

しかし、本当に楽かというとそうでもないのがこの世界。
昔に比べれば楽にはなった部分はあるものの、やっぱり厳しい側面もあるプログラマー、ITエンジニアの世界についてお伝えします。

※以下、「プログラマー・ITエンジニア」はエンジニアに統一。理由は後述します。

労働時間は短くなったが、1年通して常に短いわけではない

10年くらい前のエンジニアの労働時間は凄まじいものがありました。
裁量労働制やみなし残業制(みなし時間超えても無給の謎制度として扱う企業が多かった)が横行し、時給換算するとコンビニのバイトより安い人が続出。新卒で入った会社では、別部署に配属された同期の給与が時給換算500円を切っていましたが、今もその企業は上場を続けています。

しかし、今はそういった企業はかなり少なくなっています。
理由は極端な人材不足です。

今は求人要綱に「平均残業時間45時間」なんて書いたら応募は来ません。10年前は45時間なら少ない方と言われていましたが、今そんなことをしていたら人が確保できません。どの企業も労働時間削減を行って、労働環境の良さを必死にアピールしています。

しかし、実際のところ1年通して常に労働時間が短い企業は稀です。多くの企業で、年に1、2回はリリースやトラブルなどである程度の残業が発生します。デスマーチと呼ばれる終わりのない残業地獄は減っていますが、数十時間の残業がちょこちょこ発生するのが平均的なエンジニアの現状です。

事務職のように、年間通じてほぼ定時帰宅可能という状況にはなっていません。

給与は高くなってきている

給与はかなり上がっています。特にここ2年くらいで中小企業のエンジニアの給与は急上昇しています。Web系、Sier系、アプリ系、全てです。

以前は未経験なら年収250~300万(月収20~23万)、経験者でも3年くらいの経験なら年収350~420万(月収25万~30万)くらいが一般的でした。しかし今は1年~2年程度の経験で400万~を希望する人も多く、3年となると500万~を希望する人がかなり多くなっています。新卒の段階で月40万~出すような企業も出てきているので、応募者のイメージに「エンジニアは給与が高い」という意識が出てきているのかもしれません。

実際にそれで採用されるかどうかは能力次第ですが、「応募者が少ない」「希望給与が高い」の組み合わせで、高くても採らざるを得ない環境が企業側に出来上がっているのは間違いありません。

勤怠はゆるいが成果を見られる

会社にもよりますが、エンジニアは最も勤怠が緩い部類の職種に入ります。

「労働時間と成果が直結しない」「リモートワークでも成果が出せる」など、勤怠を厳しく管理する必要性が低く、また「GitHubなど作業ログを共有しやすい仕組みがある」など、成果そのものも見やすいためです。

これは逆に言えば働いた時間で評価されにくいということです。無遅刻無欠勤で毎日8時間しっかり作業していても、成果が少なければ「あの人仕事遅くて使えない」と言われるのがエンジニアです。

上司からの目も厳しければ、同僚からの目もかなり厳しいため、ゆるい勤怠だけを謳歌しようとする人は、かなり肩身の狭い思いをすることになります。

業務範囲がかなり拡大している

SIerの一部の会社を除き、プログラマーという職種の役割は「プログラムを書くこと」ではなくなっています。

昔の日本のシステム開発では、大まかに言って「要件定義 → 設計 → 開発 → テスト」のように工程分けが行われており、それぞれ別の担当者が各工程を担当するという伝統がありました。そのため、設計担当が作った設計書に沿って、ひたすらプログラムを組む「プログラマー」という役割がありました。しかし、今はこういった開発方式を取っているのは一部のSIerに限定されます。

多くの企業では、プログラマーと設計者の間に垣根がなくなり、場合によっては要件定義など営業的な側面も含め、全て「エンジニア」が担当するようになっています。

当然、求められる知識も広がりました。

一時期流行ったフルスタックエンジニアという単語がありますが、実際、社内情報システムからサービス開発・運用、スマホアプリ開発まで全て同じ人に任せるつもりという企業も少なくありません。割と本気で、フルスタックエンジニアが求められています。

if文が書けるとか、for文が書けるとか、そんなことで雇用側が満足することはありません。業務時間内外問わず、相当勉強しなければ「期待ハズレ」と低評価にされやすい厳しい職種です。

もちろん会社にもよりますが、総じて昔より求められることが多い職種になっています。

エンジニアは厳しくて気楽な職種

私自身は、エンジニアは気楽な職種だと考えています。

成果が運の良し悪しに影響されず、自分でコントロールできるというのが一番の理由です。営業であれば、面倒な客を引き続けて成果ゼロということもあり得ます。

成果さえ出ていれば、ある程度自分の好きにやっても許される風潮も気に入っています。「エンジニアは変人が多い」などと揶揄されることもありますが、先人達の振る舞いには感謝しています。

しかし、楽な職種だとは考えていません。

エンジニアになって10年以上経過しますが、まだまだ、自分が出来ないことの多さに悩みます。勉強しても勉強しても、出来ないことが減るどころか増える一方で追いつける気がしません。

気楽ではあるが楽ではない。厳しさと引き換えに気楽さを手に入れられる職種が、エンジニアなのではないかと思います。